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て基礎的に検討した結果と実際にメガフロートに適用した結果について報告する。
2.実験手法と装置
2−1.溶接対象と水中溶接手法
浮体式の海洋構造物としては、ポンツーン型や箱型など多くの形式が存在するが、現在進行しているプロジェクトでは、箱型の構造が採用されている。各地の造船所などで建造された9個の箱型構造の浮体ユニット(100mL×20mW×2mD)を実際に洋上で接合し、ユニット接合部の構造、引き寄せ固着工法及び高信頼性溶接技術の開発とその検証試験を実施している。Fig.1に浮体ユニットの断面図を示す3)。浮体ユニットは隔壁で小区画に仕切られ、ロンジ、スティフナで補強された構造になっている。鋼構造物の接合には溶接を用いるのが通常最も経済的であるが、箱型構造物の洋上接合では、溶接線の全長は長く、溶接すべき部位の約1/2が海面下に没している。このため、経済的でかつ信頼性の高い水中溶接技術の確立が重要な開発課題の一つとなっている。Fig.2に水中溶接手法の分類を示す。水中溶接手法は、乾式法と湿式法とに大別される。乾式法は溶接部の圧力により、大気圧法と環境圧力法とに分類される。湿式法では、溶接部の圧力は環境圧力となり、溶接部を局所的にシールドして溶接を実施する局部乾式法と溶接部が水に濡れた状態で溶接を実施する純湿式法とに分類される。コファーダム溶接法は大気圧溶接法であり、底部に防水区画を設置し、浮体内部の水を排除して、溶接部を陸上と同じ環境にする。溶接環境は良好になるが、底部の防水区画の設置が潜水作業となり長期の工程を必要とする。
圧気(ハイパーバリック)法では、浮体内部を密閉加圧することにより溶接部から水を排除する。潜水作業は不必要となるが、内部は加圧状態となり内部環境の保全と溶接作業者の衛生管理などに注意を必要とする。局部乾式法は、水カーテンやワイヤブラシあるいはゴム製のスカートなどで溶接部を局部的にシールドする溶接法であり、乾式法に比べてコストと工期短縮が図れる。しかし、溶接継ぎ手性能を確保するためには、シールド状態や溶接状態の安定保持など解決すべき課題も多い。純湿式法は溶接部が完全に水に浸った状態で実施する溶接法であり、特殊な設備や準備はあまり必要としないが、作業性に劣り、満足な品質を確保するには相当高度な技能と熟練を必要とする。実際の洋上接合では乾式溶接法が採用され、各種の乾式工法の得失が検討された。将来的には局部乾式溶接技術の確立が必要であり、基礎的な開発研究を実施し、実施工への可能性と問題点を明らかにするために1区画について試験的に水中溶接を実施した。

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Fig.1 Section of a Mega-float unit vessel

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Fig.2 Classification of underwater welding

2-2.水カーテン法による湿式溶接の原理
Fig.3に水カーテン法による局部空洞の形成原理を示す。カーテン水を用いない場合には、シールドガスは大きな塊となって間欠的に外部に放出される。気泡が放出される際に周囲の水が侵入し、溶接部を安定にシールドすることは困難である。一方、溶接ノズルの端部から円錐上にカーテン水を噴出させると、カーテン水は周囲の水と内部のシールドガスとの境界を形成し、シールドガスはカーテン水が母材と衝突する領域で小さい気泡となって放出される。このため、内部の圧力変動は小さく、溶接部を安定に保持することが可能である。安定な局部空洞を形成するためには、開先部の形状に応じた水カーテンノズルを作成し、適正なシールド条件を選定することが必要である。

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Fig.3 Effect of water curtain on local dry cavity

 

 

 

 

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